大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)807号 判決

被告人 水谷明

〔抄 録〕

先づ職権で調査すると、原審第三回公判調書によれば、同公判期日において被告人に対する昭和三五年一二月二四日付起訴状及び昭和三六年三月二日付追起訴状記載の各公訴事実につき、被告人の「事実はそのとおり相違ありません。私の刑事責任は認めます。」との陳述に基き本件を簡易公判手続により審判する旨を決定がなされ、爾後簡易公判手続による審理が行われたことは明らかである。しかしながら、右第三回公判調書によれば同公判期日において、簡易公判手続による証拠調に引続いてなされた被告人の供述は右追起訴状記載の公訴事実(窃盗)についてはこれを認める趣旨のものとは到底認められない。このような場合にはその訴因について簡易公判手続によることが相当でないものと認めて、刑事訴訟法第二九一条の三の規定により、簡易公判手続により審判する旨の決定を取り消し、改めて通常の手続に従つて審理及び裁判をなすべきであるのにかかわらず、記録によれば、右決定を取り消されることなく、結局全訴因について簡易公判手続により審理され、判決宣告にいたつたことが明らかである。すなわち、原審は、その訴訟手続において、通常手続によるべき事案を簡易公判手続によつて審判した違法があり、この訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

(加納 村木 河村)

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